🦉コミミズク(道東の野鳥図鑑)

コミミズク(Short-eared Owl)


分類

  • 分類:フクロウ目フクロウ科 / コミミズク属
  • 学名:Asio flammeus
  • 英名:Short-eared Owl

コミミズクってどんな鳥?

コミミズクは冬に日本を訪れる渡り鳥で、他のフクロウとは違って日中に活動することが多い珍しいフクロウです。名前の「コミミ」は「小さな耳」という意味で、頭の上にある小さな羽角(耳のように見える羽毛)が由来となっています。ただし、この羽角は普段はほとんど目立たず、警戒したときなどに立てることがあります。

開けた草原や農耕地、河川敷などを好み、低空をゆったりと飛びながら獲物を探す姿が印象的です。その飛び方はまるで大きな蝶のようで、見る人を魅了します。


コミミズクの生態

渡りと越冬

コミミズクは北半球の高緯度地域で繁殖し、冬になると南下して日本にやってきます。日本では10月頃から翌年4月頃まで見ることができる冬鳥です。北海道から九州まで広く飛来しますが、特に関東地方や北海道の平野部でよく観察されています。

越冬地では群れで生活することが多く、日中は草むらや低木の中で休息し、夕方から夜にかけて、そして早朝に活発に狩りを行います。他のフクロウ類と比べて日中も活動的なのが大きな特徴です。

狩りの方法

コミミズクの狩りはとても特徴的です。地上1〜3メートルほどの低空をゆっくりと飛びながら、下の草むらにいる獲物を探します。この飛び方を「ハンティングフライト」と呼び、バードウォッチャーにとって最も観察しやすい行動の一つです。

獲物を見つけると、空中でホバリング(停空飛翔)したり、急降下して捕らえます。主な獲物は野ネズミですが、小鳥やモグラなども捕食します。優れた聴覚を持ち、雪の下や草の中にいる獲物の音も聞き分けることができます。

ねぐらと習性

日中は草原や農耕地の地面、または低い杭の上などで休んでいます。複数の個体が近い場所で休むこともあり、これを「集団ねぐら」と呼びます。夕方になると活動を始め、美しい夕焼けを背景に飛ぶ姿を観察できることもあります。


コミミズクの特徴

見た目の特徴

体長は約37〜39cm、翼を広げると約95〜105cmになります。体重は約300〜400gと、フクロウの仲間では中型のサイズです。

全体的に黄褐色の羽毛で覆われ、細かい褐色の縦斑があります。顔は平らで、黄色い目が印象的です。目の周りには黒い縁取りがあり、まるでアイラインを引いたように見えます。翼は長くて先が尖っており、優雅な飛翔を可能にしています。

飛んでいるときは、翼の下面が白っぽく見え、翼の先端近くに黒い斑があるのが目印になります。この特徴を覚えておくと、遠くから飛んでいる姿を見つけやすくなります。

フライトの特徴

コミミズクの飛び方は、ゆったりとした羽ばたきと滑空を組み合わせたもので、とても優雅です。風に乗るように飛ぶ姿は、まるでダンスをしているようにも見えます。

翼を浅いV字型に保って飛ぶことが多く、この飛び方も見分けるポイントの一つです。時々、翼を大きく羽ばたかせて高度を上げたり、風に向かって停空飛翔したりする姿も観察できます。

鳴き声

コミミズクは比較的静かな鳥ですが、繁殖期や縄張り争いの際には「ブーブー」という低い声で鳴きます。日本の越冬地ではあまり鳴かないため、声を聞く機会は少ないかもしれません。

翼を打ち合わせる「ウィングクラップ」という行動も見られることがあり、これはディスプレイ飛翔の一部として行われます。


観察のポイント

コミミズクは日中に活動するため、フクロウの仲間の中では比較的観察しやすい鳥です。ここでは、観察のコツや注意点をご紹介します。

観察に適した環境

コミミズクは開けた環境を好みます。以下のような場所で観察できる可能性が高いです。

農耕地・田んぼ 冬の田んぼや畑は、コミミズクの代表的な観察場所です。特に刈り入れ後の田んぼや休耕地がねらい目です。

河川敷 広い河川敷の草地も好んで利用します。見通しが良いため、観察しやすい環境です。

草原・牧草地 広々とした草原や牧草地も良い観察ポイントです。北海道では特に多く見られます。

海岸近くの草地 海岸に近い開けた草地でも観察できることがあります。

観察の時間帯

コミミズクは薄明薄暮性が強く、以下の時間帯が観察に最適です。

夕方(日没前後) 最も活動的になる時間帯です。ハンティングフライトを観察できるチャンスが高くなります。

早朝(日の出前後) 朝の狩りの時間帯も観察に適しています。朝日を浴びて飛ぶ姿は特に美しいです。

日中 他のフクロウと違い、日中でも飛んでいる姿を見かけることがあります。特に曇りの日や風の強い日は日中の活動が増える傾向があります。

観察のコツ

  1. 双眼鏡を準備:遠くから観察するために、双眼鏡があると便利です。7〜10倍程度の倍率がおすすめです。
  2. 地平線を見渡す:低空を飛ぶため、地平線付近を広く見渡すと見つけやすくなります。
  3. じっくり待つ:一箇所で30分以上観察すると、飛び出す瞬間に出会える可能性が高まります。
  4. 複数の個体を探す:1羽見つけたら、近くに他の個体がいることも多いので、周辺もよく探してみましょう。
  5. 車から観察:警戒心が強いため、車の中から観察すると近くで見られることがあります。

北海道での観察スポット

北海道では以下のようなエリアでコミミズクが観察されています。

道東エリア

  • 根室市の原野や農耕地
  • 別海町周辺の牧草地
  • 釧路湿原周辺の草地

道央エリア

  • 石狩平野の農耕地
  • 千歳川周辺の河川敷
  • 苫小牧周辺の草地

十勝エリア

  • 帯広周辺の農耕地
  • 十勝川の河川敷
  • 広大な畑作地帯

冬の十勝平野は、コミミズクの良い観察地として知られています。

観察時の注意事項

コミミズクを観察する際は、以下の点に注意しましょう。

近づきすぎない 驚かせてしまうと、大切なエネルギーを消費させることになります。少なくとも50メートル以上の距離を保ちましょう。

私有地に注意 農地や牧草地の多くは私有地です。許可なく立ち入らないようにしましょう。道路や公道から観察するのが基本です。

車の停車場所 観察のために車を停める際は、交通の妨げにならない場所を選びましょう。

フラッシュ撮影は厳禁 フラッシュは鳥に大きなストレスを与えます。自然光での撮影を心がけましょう。

静かに行動 大きな声や急な動きは避け、静かに観察しましょう。

防寒対策 冬の野外観察では、しっかりとした防寒対策が必要です。特に夕方は気温が下がるので注意しましょう。


コミミズクと環境

コミミズクは開けた環境に依存しているため、生息地の環境変化の影響を受けやすい鳥です。農地の宅地化や草地の減少は、コミミズクの越冬地を減らす要因となります。

また、主な獲物である野ネズミの生息環境が保たれることも重要です。農薬の使用や環境の変化により、餌となる小動物が減少すると、コミミズクの生存にも影響が出る可能性があります。

私たちができることは、コミミズクの生息環境を大切にし、適切な距離を保って観察することです。美しい冬の風景の中を飛ぶコミミズクの姿を、これからも見続けられるように、自然との共生を意識していきましょう。


楽しみ方のヒント

コミミズクの観察は、冬のバードウォッチングの醍醐味の一つです。以下のような楽しみ方があります。

飛翔シーンの撮影

夕焼けを背景にしたコミミズクの飛翔シーンは、野鳥写真の中でも人気の被写体です。シャッタースピードを上げて羽ばたきを止めたり、スローシャッターで流し撮りをしたり、様々な表現が楽しめます。

行動観察

狩りの瞬間や、草むらから飛び立つ瞬間、複数の個体が一緒に飛ぶ様子など、観察していると様々な行動が見られます。双眼鏡越しにじっくり観察するのも楽しいものです。

季節の移り変わりを感じる

コミミズクの飛来は冬の訪れを、そして春の渡去は春の訪れを告げてくれます。季節の移り変わりを感じる自然観察の楽しみ方です。


まとめ

コミミズクは、冬の開けた環境で出会える魅力的なフクロウです。日中でも観察できる貴重な機会があり、初心者の方でも比較的見つけやすい野鳥の一つです。

ゆったりとした飛翔、印象的な黄色い目、そして低空を舞う優雅な姿は、一度見たら忘れられない思い出となるでしょう。冬の野外は寒いですが、防寒対策をしっかりして、ぜひコミミズクとの出会いを楽しんでみてください。

観察の際は、鳥への配慮を忘れず、マナーを守って自然を楽しみましょう。あなたも冬の草原で、優雅に飛ぶコミミズクに出会えますように。


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