ヤマセミ(Crested Kingfisher)
基本情報
和名:ヤマセミ
英名:Crested Kingfisher
学名:Megaceryle lugubris
分類:ブッポウソウ目 カワセミ科
全長:38〜41cm
翼開長:約65〜70cm
分布:日本各地の渓流域〜河川中流域
生息地:清流、河川、湖沼沿いの林、湿原河川
観察時期:通年(北海道では特に秋〜冬に観察しやすい)
特徴
ヤマセミは日本最大級のカワセミ類で、
白と黒の細かい斑模様、そして大きく立つ冠羽が特徴です。
水面近くの枝や流木に止まり、
川の流れを見つめながら魚を狙う姿は独特の風格があります。
通常のカワセミよりはるかに大きく、
太いくちばしと、羽の重量感が遠くからでもわかります。
獲物を見つけると、翼を大きく広げて水面へ急降下し、
そのまま魚をくわえて戻る姿は迫力があります。
生態と行動
ヤマセミは単独行動が多く、
縄張り意識が強い鳥として知られています。
流れの緩やかなカーブや、
倒木が残る川岸を好み、
獲物を探すときは長時間同じ枝に留まります。
鳴き声は「キョッ、キョッ」と高く、通る声で、
朝霧に響くその声は、湿原の静けさを破るようです。
北海道・釧路での観察
北海道では渓流だけでなく、湿原の河川でも観察できます。
釧路川の上流〜中流域では、
流木や折れた木の上に止まる姿がよく見られます。
とくに霧の多い朝は警戒が緩むのか、
水面近くでひっそりと羽を休めています。
霧が晴れ始める時間帯に、
一度だけ冠羽をふくらませる仕草を見せることがあり、
それが写真として非常に魅力的です。
見分けやすいポイント
- 白と黒の大胆な斑模様
- 頭の大きな冠羽(特に上方向に立つ)
- がっしりした太いくちばし
- 羽の模様が細かく密集している
同じ水辺にいるカワセミは青色で小型、
アカショウビンは赤いくちばしの赤褐色で、
ヤマセミとは一目で区別できます。
餌と採食
主食は魚類で、
小型〜中型の魚を好みます。
水面を見つめて機会を伺い、
一直線に飛び込んで捕らえる狩りが特徴的です。
冬は氷の隙間や、流れがある場所を選んで狩りを行います。
繁殖
繁殖は河川沿いの土手や崖に穴を掘って巣を作ります。
柔らかい土を深く掘り、
その奥に卵を産むという珍しい習性を持っています。
幼鳥は巣立ち後も親の近くで過ごしますが、
次第に自立し、それぞれの縄張りへと散っていきます。
撮影メモ(釧路川)
撮影日:2025年10月上旬
撮影地:釧路川(湿原域)
濃い朝霧が出た日の撮影で、
流木の上でじっと川面を見つめているヤマセミを観察しました。
霧による柔らかい光で白黒の模様が繊細に浮かび、
背景の木々が淡く滲むことで、
ヤマセミの存在感が強調される環境でした。
露出は白飛びを防ぐため控えめに設定し、
コントラストを抑えることで朝の空気感を再現しています。
飛び立つ瞬間はシャッタースピードを1/2000秒以上にすると、
冠羽の形が綺麗に残ります。
備考
ヤマセミは非常に警戒心が強く、
接近には細心の注意が必要です。
釧路川では他の水鳥との距離感が独特で、
湿原ならではの「静けさの中にいるヤマセミ」が魅力です。
自然の条件が重なった日の撮影は特に印象深く、
その一瞬を写真で残せることが、
湿原撮影の醍醐味と言えるでしょう。